経営幹部 座談会Cross Talk 03

未来を、ここから

企業はよく〝進化する生物〟に例えられます。だとしたら、現在の姿に至った背景には、無数の「進化のストーリー」が存在しているはず。
明かされる機会は少ないであろうストーリーに「スポットを当てたい」というのが、このクロストークの狙いのひとつ。
それは同時に、「未来を、ここから」というテーマに通じるはずのものだから─。

神足 勝昭
神足 勝昭
取締役副会長
石川 高志
石川 高志
代表取締役社長
天野 政浩
天野 政浩
執行役員
黒川 昌彦
黒川 昌彦
執行役員
片山 修
片山 修
執行役員

グローバルウェーハズ・ジャパン(GWJ)のあゆみ

神足
シリコンウェーハのビジネスは、東芝セラミックス時代から数えて45年以上続けてきたことになります。昔はシリコンサイクルと言って4年ごとに浮き沈みがありました。またリーマンショックという未曾有の危機も経験しました。みなさんは、それぞれ異なるポジションで、様々な経験をされたと思いますが、これまでの会社生活での印象的な出来事について話し合っていきたいと思います。まずは私自身ですが、1990年代に新潟に200㎜の工場をつくり、それまで親会社の東芝に製品を納めることが主体であったのが、当時「外販」と呼んで東芝以外の顧客への販売を増やそうと言うことで、積極的に海外の半導体メーカーに拡販活動を始めた頃がとても印象的で、これが現在のアニールウェーハメーカーとしての我が社の原点だと思っています。
石川
私は300㎜の生産規模を6倍に拡大するため、当社史上最大の設備投資を実施したことが印象に残っています。世界に先んじた大規模な自動化を取り入れた先端工場を皆で苦労して立ち上げたことが昨日のことのように思い出されます。
天野
半導体の歴史は、ウェーハの大口径化と回路の微細化によって進歩してきました。私が入社したころは、125㎜や150㎜のウェーハが主流でした。それが今では300㎜が中心となり、さまざまな用途に使われるようになったことに隔世の感があります。私は、製品が出来上がったり、人が成長していく様子を見ることが好きで、特に結晶が成長している様子や、ウェーハが研磨される様子は何時間見ても飽きない楽しさがあります。現在は、製造工程に入る機会が減ってしまい残念です。
黒川
2007年にMBOによりコバレントマテリアルと社名を変えた時が印象的です。当時、今後成長する300mmの増産投資を進めており、それまでは一技術担当として部分部分を進めるという仕事が多かった私自身が、取りまとめ役として成長する機会となりました。
片山
私が最も印象に残ったできことは中越地震や東日本大震災などの地震です。特に中越地震の時は製造課の品質担当だったので、昼夜問わず続く余震のたびに製品の品質確認をする業務を何度も何度も繰り返したことが思い出されます。中越地震も東日本大震災も会社は被害を受けましたが、操業は続けることができました。これは未曽有の困難を直面しても負けないGWJの強みだと思います。

ターニングポイント

神足
会社の歴史を大きく変えたのは2006年に300mmウェーハの生産量を月15万枚に増強するための投資だと思います。私は当時技術部長として、会社としてそれまでに経験したことのない大規模な投資の承認を経営陣から取り付けるため奮闘努力していました。あの投資があったからこそ、今のGWJがあると思っています。もし投資を行っていなかったら、会社の存続や今のような企業価値はなかったと思います。現在、若い人たちと共に、次世代に向けての投資という種を蒔いていますが、これが花開いてさらなる会社の発展につながることが本当に楽しみです。
石川
技術開発においては、計算機シミュレーション技術、超高温熱処理技術、AI技術の三つがターニングポイントになったと思います。シミュレーションは結晶成長の特性決定要因を明らかにし、この技術がなければECASは誕生していなかったとさえ思います。今ではウェーハ加工、熱処理、クリーンルーム制御にまで応用されています。超高温熱処理は当社のお家芸であるアニールとは全く異なるコンセプトのECASを生み出した当社のコア技術です。AIは技術者の経験値と組み合わせることで、唯一無二の独自技術を創り上げる可能性のあるすばらしい技術で今後の技術開発のコアとなると確信しています。
天野
私は、再生可能エネルギー使用率を100%にすることを目指し活動を始めた今が、大きな変化の時だと思います。目標実現の一環として、2023年に、本社・新潟工場の第4棟の屋根に太陽光発電設備を設置し、2024年には第3棟、物流棟の屋根へ増設しました。この大きな目標を達成した頃には当社の姿はさらに大きく変わっているものと思います。引き続き地球環境の保護と持続可能な社会の実現のために、努力を続けて行きます。
黒川
ターニングポイントはいくつかあると考えますが、どれか一つと言われれば、私はGlobalWafersグループの一員になったことを挙げたいと思います。国内大手ウェーハメーカーの一つも、複数企業の合併で大きく成長してきましたが、全て国内企業の合併でした。一方、我々は異なる国で育った企業の集まりであり、Worldwideに生産拠点を抱えるGlobalWafersは、グループ内の協業と競争が原動力となって更に成長できると確信しています。
片山
私もGWCグループへの加入がターニングポイントだったと思います。様々な会社の行動様式が変わったと思います。経営層から一般社員までフラットな関係で、自由にものが言える会社になったと思います。今後若い世代が新しい発想でこの会社を引っ張っていってくれることを期待します。

グローバルであることの本当の意味

神足
世界9カ国18拠点におよぶグループの相乗効果は、間違いなく私たちの強みです。グループ内においては、常に「切磋琢磨」し合っている関係性があります。異文化交流もあり、楽しい側面もあるこの環境を活用しない手はありません。グローバルな感覚持った若い人たちの活躍を期待しています。
石川
私自身にとっては、日本人以外の仲間ができたことが非常に良い経験になっています。私は台湾本社をはじめ世界中の拠点を訪問し、多くの議論を現地技術者たちと行う機会を得ました。そんな環境の中で感じていることは、日本とは異なる文化の中でも日本で培ってきた交渉や意見主張に関する知見は十分武器になります。様々な文化イコール様々なモノの見方が発想を柔らかくする可能性があることも感じています。常日頃から世界(グローバル)を感じる環境というのは当社の強みの一つではないかと思います。
天野
世界各国のグループ会社の同僚と様々な場面で連携する機会が増えています。現在では、英文メールが来ない日は無い状況となりました。それぞれの国の法律や制度の違いはありますが、共通の目標に向かっていくことに変わりはありません。仕事のスピード感等は見習わなければならないと感じています。
黒川
GlobalWafersグループは8カ国16拠点に生産拠点があり、BCPの観点から他社よりも優れた当社の強みだと思います。今やBCPは、ビジネスの世界では必要不可欠なものになっています。また、技術革新や厳しい競争環境など世界的な変化に対応していくには、国際的な視野を持ってかつ素早い意思決定で動いて行く必要があり、我々は強みを発揮できると思います。
片山
私はグローバルであることは二つの強みがあると思います。一つはグループ各社の営業活動により、ワールドワイドな規模での販売力を持っていることだと思います。もう一つは技術開発において、グループ内や競合他社との比較評価が適正に行われ、開発方針がより正確に定められるようになることだと思います。

未来を、ここから

神足
最先端のシリコンウェーハにより半導体デバイスの進化を支えることが、「未来を、ここから」ということだと思います。そのための研究開発、設備投資、人材育成への努力を惜しむことは考えられません。若くエネルギーを持った人たちで常に技術でリードする。そうあり続けることを目指していきたいですね。
石川
これからのGWJの未来については明るいものだと考えています。半導体関連産業は国家の安全保障に係る重要産業で、この業界の中で重要な役割を果たしてきた我々は、引き続き大きな期待を頂ける企業でありたいです。技術チームとしましては、先読みのできる新規技術開発を若い世代が中心となり構築してほしいですね。
天野
これからは、多様な人材がその能力を十分に発揮できる職場環境を提供することが重要だと考え、ダイバーシティーへの取り組みを推進しています。2024年5月に、女性の活躍推進に関する取り組みに対し、「えるぼし認定」の2つ星(2段階目)を取得しました。引き続き、女性活躍推進や育児と仕事が両立しやすい職場環境を整えるとともに、誰もが自分自身の能力を発揮し、安心して働ける職場づくりや働き方の仕組みの整備に一層努めて行きたいと思います。
黒川
EVやAIなどの新技術の実用化により、半導体の重要性はますます高まっています。我々は半導体を材料の面から支えるリーディングカンパニーを目指したいと思います。アニールウェーハは一時代を切り開いたと思いますが、同じようなイノベーションを再び起こしたいですね。一方で企業の社会的責任は昔とは比べ物にならないほど高くなっており、コンプライアンスの遵守は当然のこと、地球温暖化防止など積極的に取り組む必要があります。競合他社に先駆けてRE100(再生可能エネルギー100%)を達成し、地球の一員として未来を築いて行きたいと思います。
片山
社会の変化に柔軟に対応し、高い技術力の製品を継続的に生み出して、半世紀続く会社にすることが、私たちの使命だと思います。